誰でもなりうる認知症

認知症は 65 歳以上の 5 人に一人がなると言われており、誰にでも起こりうる病気です。発症率は高齢になるほど増え、95 歳以上の 8 割が認知症という統計が出ています。認知症は最初に物忘れが目につき始めます。しかし物忘れによって生活に支障が出るまでには時間のずれがあり、物忘れを認めたがらない、自覚がない、ご家族が気が付かないなどの理由からなかなか受診に至らないといわれています。
物忘れといっても加齢によるものと認知症によるもとで違いがあります。加齢(正常)による物忘れとは「朝食に何を食べたかを思い出せない」という、物事の一部の物忘れで、ヒントがあれば思い出せます。一方で認知症の物忘れは「朝食を食べたことをおもいだせない」など、物事自体を忘れてしまい、食べているよ、と指摘を受けても思い出せません。中核症状と言われる認知症の症状には、物忘れ以外の症状もあります。時間や場所が分からなくなる見当識障害、料理や作業の手際が悪くなる実行機能障害などです。これらの中核症状は認知症の方すべてに見られる症状です。そのほかに認知症の方すべてには見られない行動・心理症状(BPSD)と呼ばれるものがあります。具体的には幻覚・妄想・怒りっぽさといった症状が現れます。行動・心理症状(BPSD)は周囲の環境や周囲の接し方を調整することで改善できることが特徴です。
中核症状は基本的に治せません。しかし、認知症初期のサインを理解し、「いつもと違う」と気づいて早期に受診し治療を開始することで急速な進行を防ぐことができます。認知症の治療は薬物療法と非薬物療法があります。現在日本では 4 種類の薬が認可されており、どれも完治を望むものではなく、進行を遅くする働きがあります。非薬物療法には運動療法・音楽療法、認知機能訓練、回想法などがあります。
認知症は脳の病気ですから、脳を守ることが発症・進行予防になります。具体的には脳に栄養を送っている血管を守ることと、脳を活性化することです。
生活習慣病である、高血圧・高脂血症・糖尿病・肥満は血管を痛めます。生活習慣病の予防には、減塩、食生活の見直し、禁煙、適度な運動、定期的な受診が大切です。脳の活性化には、余暇活動や社会的交流がよいとされています。趣味やゲーム、人と会う機会を多くもち、旅行するなどが刺激となります。
誰でも認知症になる可能性がある時代、身体を大切にして楽しんで余暇を過ごすことが認知症の発症・進行予防には一番効果があるようです。
当院では毎週水曜日の午前中に物忘れ外来を行っています。物忘れに対する相談・検査・治療を行っていますので、お困りの方がいましたら地域包括支援センターやかかりつけ医を通してご相談ください。院内には認知症認定看護師が 2 人いますのでいつでも声をかけてください。

2021/8/27